◆原因◆
ものをとろうとしたときや、なにか緊張したときに手がふるえることがあります。疲れたときや、寒さを感じたときにもそのようなふるえが生じることがあります。このようなふるえを振戦といいますが、これには心配しなくてもいいものと医師にかからなければならないものとがあります。このふるえは、互いの拮抗筋群が交互に収縮するために生じます。
ふるえの大きさによる分類では、1秒間に8〜12回の周期で細かくふるえるものを微細振戦といいます。てのひらの上に紙をのせてみるとふるえているのがよくわかります。それに対して毎秒3〜6回の周期で生じるふるえを粗大振戦といいます。
ふるえの生じる状況の違いによる分け方では、じっとしているときにもふるえがくるものを静止振戦といい、なにかをつかもうとするときに生じる手の激しいふるえを企図振戦といいます。原因はそれぞれ違います。
◆考えられる病気◆
老人によくみられる、ふるえの原因となる病気は、企図振戦、心因性振戦、甲状腺機能亢進症の振戦、老人性振戦、パーキンソン症候群、薬物中毒性振戦がおもなものです。そのほか、小脳失調症、肝不全、アルコール中毒、長期臥床、などでもみられます。
(1)企図振戦
企図振戦は、緊張の強い人にみられます。ほとんど心配はないのですが、この振戦はなにかをとろうとするような随意運動時にみられるので、小脳の障害や、まれに多発性硬化症という病気の初期にみられる場合があります。この多発性硬化症は、ふるえのほかに視力障害、発語障害、歩行障害、直腸障害等をきたしますので、これらの合併症があれば早めに病院を訪れてください。
(2)心因性振戦
緊張性の人にみられるもので、人が見ていたり、なにか不安があったりしたときにより強く生じてきます。しかし、これはとくに心配するものではありません。抗不安薬(マイナートランキライザー)等の薬で症状が落ち着きます。
(3)甲状腺機能亢進症の振戦
緊張性の振戦と紛らわしいのですが、これは病気です。精神の緊張時の振戦に加えて発汗や動悸が伴うようであれば、この甲状腺機能亢進症の振戦を疑います。心因性の振戦では指先が冷たいのに対して、この場合は温かいのが特徴です。
(4)老人性振戦
老人にみられる振戦をいいます。字を書こうとすると手がふるえると訴える場合が、最も多いです。本態性振戦ともいい、心因性や甲状腺機能亢進症によるものなどを除外して残るものをいいます。利き腕によく起こります。おもしろいことにアルコールで軽快します。動脈硬化によるものが多くありますが、パーキンソン症候群によってみられるものもあります。
(5)パーキンソン症候群
粗大振戦と静止振戦が重なっています。じっとしているときにもふるえがみられます。このパーキンソン症候群により生じる場合、往々にして腕の固縮や顔の無表情を伴います。パーキンソン症候群による場合は、治療の対象となります。
(6)薬物中毒性振戦
感情の興奮時に大きくなりがちです。慢性のアルコール中毒のときにみられます。このほかニコチン、アンフェタミンの中毒によっても生じてきます。また抗不整脈薬、甲状腺治療薬、向精神薬などでも振戦が生じるときがあります。薬物との接触を絶ち、原因の治療が必要です。
◆対応と注意点◆
原因となる病気にあわせた治療が必要ですから、甲状腺機能亢進症や多発性硬化症、パーキンソン症候群など治療をしなくてはならない疾患を早く区別することが肝心です。
◆治療方法◆
振戦の原因によって違います。老人性振戦の場合はβ-遮断薬がよく効きます。
◆診療科◆
神経内科、内科、内分泌科、老人科
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