せきは、呼気や吸気の通り道である気道内の異物や分泌物を排除するための生体の一種の防御反応で、肺内の空気が気道を通じて爆発的に出される現象です。一般に、気道内にまちがって入った異物、ほこり、煙などの粒子状の異物や、痰による機械的刺激、あるいは気道粘膜の炎症や過敏状態に加わる刺激(炎症性刺激)、化学物質(硫酸、アンモニアなど)や刺激性ガスなどの化学的刺激によって起こります。気道の圧迫や心因性の原因で起こることもあります。せきは意識的に出すこともできます。
痰は、気道の分泌液や、粘膜の炎症やうっ血などで生じた物質、細菌、異物、唾液などの混じったもので、せきとともに排出されます。呼吸器系に感染などの病気がある証拠と考えられています。
◆原因と考えられる病気◆
何らかの刺激が気管、気管支に作用するとき、さらに呼吸器以外の刺激であっても迷走神経を経て延髄の核中枢が興奮すると、呼吸筋が収縮してせきが起こります。刺激に最も敏感な部分は咽頭、喉頭、気管や気管支の分岐部といわれています。せきや痰を伴う病気の多くが、かぜ症候群をはじめとして急性あるいは慢性気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症、肺炎、肺気腫、肺腫瘍腫、肺がん、肺膿腫、肺線維症、肺結核、塵肺、胸膜炎、自然気胸など気道や肺、胸膜の病気です。心臓病が進行し心不全の状態になると、せき・痰を伴いやすくなります。
◆対応と注意点◆
せきや痰の特徴から原因疾患を推定するときは、突発性に起こったのか慢性持続性か、あるいは発熱、胸痛、息切れ、喘鳴などを伴うかどうかに注目します。突発性のせきは気道内異物、自然気胸を、慢性で頑固なせきや血痰を伴うせきは気管支拡張症、肺がん、慢性肺うっ血、肺水腫、肺結核などを疑います。かぜや急性気管支炎のせき・痰は遅くとも2週間ほどで治るのが普通です。もしそれ以上続く場合は別の疾患を考えたほうがよいでしょう。老人に多い肺炎は、せきや痰と同時にあちこちの筋肉に痛みを感じたり、発熱やだるさを伴うのが特徴です。
せきの起こりやすい時間が就寝後に多いのはうっ血性心不全、明け方に起こるのは気管支喘息です。痰を伴わないいわゆる乾性せきと、分泌液、痰の多い湿性せきがあります。一般的には前者はかぜ、肺結核、肺がん、急性気管支炎に、後者は気管支拡張症、気管支喘息、化膿性細菌による気管支炎に特徴的なものです。
痰の色、外観、においなどからも原因疾患がある程度推定されます。よく観察しておいて、診察の際に医師に伝えるとよいでしょう。無色透明ないし白色の痰は主として粘液よりなり、気管支喘息、肺水腫など、黄色は肺化膿症、緑色は気管支拡張症、び慢性細気管支炎、肺化膿症などが推察されます。赤〜暗赤色は血液の混じったものです。漿液性の薄い痰は肺水腫、心不全のとき、粘液性の濃い痰は喘息、膿性痰は肺化膿症、気管支拡張症にみられます。嫌気性菌の感染があるときは強い悪臭を放ちます。
痰の量が1日100ミリリットル以上に及ぶ大量の場合は、気管支拡張症、肺化膿症、膿胸、肺水腫、気管支喘息などが考えられます。のどから気管に下降した副鼻腔炎の鼻汁(後鼻漏)や多量の唾液を痰とまちがえることがあり、区別しなければなりません。また、血痰が出るとすぐに肺結核ではないかと考えられがちですが、かぜでせきをしたときにのどの粘膜が傷つけられ、それが原因となっていることも多いのです。
原因疾患の診断は胸部の診察、胸部X線撮影、痰の細菌検査や細胞診検査、血液検査、肺機能検査、さらには気管支造影、気管支鏡検査、肺血流シンチグラフィ、胸部CTスキャン、肺血管撮影などにより行われます。
◆治療方法◆
痰の原因、誘因を除き基礎疾患の治療をします。薬物療法は鎮咳薬、気管支拡張薬、去痰薬を用いますが、痰の量が多く黄緑色のときは細菌感染が合併していると考えられ抗生物質が必要になります。喘息の発作や慢性気管支炎ではネブライザー療法(噴霧療法)や吸入療法を行いますが、重症の喘息発作では補液、ステロイド剤、気管支拡張薬による緊急治療の対象になります。
痰の粘稠度をさげるためには、十分な水分補給が必要です。痰が多く排出困難なときは胸部を高く口元を低位にする体位ドレナージ法(排液法)により排痰を試みるのも有効です。室内空気の清浄化を行い、タバコの煙、ガスや灯油ストーブを避け、室内を加湿するとよいでしょう。
◆診療科◆
内科、呼吸器科、老人科
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